ソロキャンプ用のシェルターを選ぶとき、多くの人が最終的に行き着くテーマが「快適性」だと思います。今回取り上げるのは、ogawaの「ヴィガスII」と、ZANE ARTSから2026年秋発売予定の新作「TOIRO TC(トイロTC)」。この2つは価格帯もブランドの立ち位置も違いますが、「屈まずに出入りできる高さを確保する」という設計思想において、明確な共通点があります。
僕が今回のゼインアーツの新作「トイロTC」ですごく注目しているのは、まさにここなんです。これまでゼインアーツの1〜2人用テントといえば、オキトマ2、ウータS、ウカなど、どうしても背の低いタイプが多かったように思います。
スペックやデザインは申し分ない。でも、「テントの出入りや中で過ごすときの腰への負担」を考えると、購入に踏み切れなかったキャンパーも少なくないのではないでしょうか。新作のトイロTCであれば、その心配は無用です。
床面積を広げるのではなく、垂直方向の空間でソロの居住性を担保する。このアプローチが両者にどう表れているのか、スペックとデザインの両面から掘り下げてみます。
結論を言うと、2人利用や悪天候への対応力ならヴィガスII、TC素材を活かした冬のソロキャンプとの相性ならトイロTCというのが、現時点での個人的な見立てです。理由を順番に解説していきます。
基本スペック比較

| 項目 | ヴィガスII | トイロTC |
|---|---|---|
| 定価 | ¥97,900(税込) | ¥59,800(税込) |
| 重量 | 9.36kg(付属品除く) | 10.5kg |
| 前室・全高の特徴 | 前室高192cm | ハイトップデザイン(コンパクトなボトム×立ったまま出入り可) |
| 生地 | ポリエステル75d(耐水圧1,800mm) | TC(綿35%・ポリエステル65%) |
| フレーム素材・径 | 6061アルミ合金 / φ14.5mm・φ11.8mm | A6061 / フロントφ17.5mm・リアφ16mm・サイドφ14.5mm |
| インナーサイズ | 150×220×160(h)cm | 135×225×120(h)cm |
| 収納サイズ | 66×26×26cm | 70×30×28cm |
| 付属品 | 張り綱、アイアンハンマー、スチールピン(ペグ)、収納袋 | ロープ類、ポールケース、ロープケース、キャリーバッグ(ハンマー・ペグは付属なし) |
| 想定人数 | ソロ〜デュオ | ソロ向け |
| 発売状況 | 販売中 | 2026年9月下旬〜10月下旬予定 |
※ヴィガスIIの価格は定価ベースだと大きな差に見えますが、ネット実売では64,000〜70,000円程度で流通していることが多く、実際の価格差はそれほど大きくありません(記事執筆時点の情報です)。ネット実売価格は販売店や時期によって変動します。
共通点:「立てる」ことへのこだわり

ヴィガスIIは前室高192cmで、かがまずに出入りできることを最大の売りにしています。
トイロTCも同様に、ボトムはコンパクトに絞りながら全高を高くとることで、屈むことなくスムーズに出入りできる設計です。
「ソロテントは狭くて当たり前」という前提を覆し、着替えや荷物整理、撤収作業を立ったまま行える快適性を重視している点は、両者にはっきりと共通しています。
設営方式の違い
ヴィガスIIは長いクロスフレームで幕を立ち上げる自立式。骨格そのものを組み上げるタイプで、立ち上げにはややコツが必要という声もありますが、慣れれば一人でも設営可能です。
一方、トイロTCの設営方式はまだ正式に公開されていませんが、恐らくビルディングテープをもとに幕を何か所かペグダウンし、フレーム(フロントフレームφ17.5mm、リアフレームφ16mm×2、サイドポールφ14.5mm×2)を幕へ取り付け、ロープをペグダウンして立ち上げる方式。張り網はヴィガスよりやや多いですが、手順通りに行えば「設営できなかった」ということにはまずならないでしょう。
フレーム素材・径の違い

ヴィガスIIのポールは6061アルミ合金でφ14.5mm・φ11.8mmの2種類、トイロTCはフロントフレームがφ17.5mm、リアフレームがφ16mm、サイドポールがφ14.5mmと、いずれもA6061アルミ合金です。
素材自体は両者とも同じ6061アルミ合金ですが、トイロTCはより太い径を採用しています。
これは素材の違いもありますが、トイロTCにはワンポールテントにあるようなメインポールがなく、幕を各フレームで拡張して形状を維持する構造でありフレームに強いテンションを掛ける必要があるためと思われます。
トイロの設営方法は従来のゼインアーツとはやや異なる方法の可能性が高く、今後公式に追加される設営マニュアルに注目したいですね。
出入りのしやすさ

ヴィガスIIは正面が台形フレームのため開口部が広く、出入りが容易です。
さらに側面・後方からも出入りできる作りで、レビューでも「両サイドにドアパネルがあって出入りしやすい」という声が複数見られます。
トイロTCは正面フレームは三角形状のため、開口の広さという点ではヴィガスIIに軍配が上がります。とはいえ、実用性としては全く問題ないレベルでしょう。
広さ・居住性

クロスポールを基本とし、前方にもフレームを追加して空間を拡張しているヴィガスIIのほうが、居住空間としての広さは優位です。
トイロがおもしろいのは斜め前に倒れるようにオーバーハングさせたフロントフレームです。日中は解放して自然を感じやすく解放感のあるスタイルで。就寝時はヒサシの真下を包むようになっているため、テーブルやチェアの配置はそのままに幕を閉じることができます。なるほど。

インナーテントのサイズを比べると、ヴィガスIIのインナーは150×220×160(h)cmで、大人2人でも快適に就寝できるサイズを確保しています。高さも十分にあるため、インナー内での着替えなどしやすい設計です。
一方、トイロTCは135×225×120(h)cm。奥行きは確保されているものの、後方に向かうほど絞り込まれる形状のため、印象としては「1人+荷物」用のインナーです。純粋な就寝快適性だけで比較すれば、ヴィガスIIに軍配が上がります。
デザイン性

ここはあくまで個人的な感想ですが、ヴィガスIIのドーム型を基本としたフォルムには、少しクラシックな印象を受けます。
一方トイロTCは、特に後方が特徴的なデザインです。くの字に切り込んだ多面体のリア形状は唯一無二で、見る角度によってここまで印象が変わるテントも珍しいと感じます。グレーメタリックのポールもクオリティが高く、デザイン面での完成度はトイロTCに軍配が上がる印象です(このあたりは完全に個人の好みの範疇ですが)。
個人的には斜め後ろからの見た目はかなりかっこよく、通りがかった人の目を惹くデザインと思います。
それぞれのデメリット

ヴィガスIIは生地がポリエステルのため、夏場は暑さを感じやすいという声が非常に多く見られます。ただし、開口部が多く、メッシュを活用できるため、風通しを確保しやすいのはメリットであり、耐水圧1,800mmを確保しており雨天時にも対応しやすい仕様です。
トイロTCはTC素材ならではの遮熱性が期待できる一方、雨に濡れた際の重量増というデメリットが伴います。TC素材は濡れると乾燥時より重量が増えやすく、撤収時には乾いた状態以上に扱いづらくなる可能性があります。撤収時の積み込み作業で、地味に体力を使う要因になりそうです。
付属品の違い
ヴィガスIIには張り綱・アイアンハンマー・スチールピン(ペグ)が付属しますが、トイロTCにはハンマーもペグも付属しません。購入後すぐに設営できるヴィガスIIに対し、トイロTCは別途ハンマーとペグを用意する必要があります。
個人的には、すでに愛用しているハンマーやペグがある人にとって付属品は正直あまり必要なく、その分を価格に還元してくれた方が嬉しいという本音もあります。これはキャンプ歴が長い人ほど感じるかもしれません。とはいえ、これからテントを始める人にとっては「付属品込みで設営まで完結できる」ヴィガスIIの親切設計はメリットとして評価できます。
まとめ:用途別にどちらを選ぶべきか

両者は「垂直方向の快適性でソロの居住性を上げる」という同じ課題設定をしていますが、目指す方向性は明確に異なります。用途別に整理すると、選ぶべきモデルはこうなります。
- 2人で使用したい → ヴィガスII インナー150×220×160cmの広さと、側面・後方からも出入りできる開口の多さは、デュオ利用での快適性に直結します。
- 雨天時の安心感を重視したい → ヴィガスII 正面フラップを跳ね上げてサイドウォールで雨風を防げる構造と、自立式で地面コンディションを選ばない安定感が、悪天候時の安心感につながります。
- 冬キャンプや焚き火を楽しむソロスタイルを重視したい → トイロTC TC素材による遮熱性や、火の粉への比較的高い耐性を活かした、秋冬のソロキャンプとの相性に期待できます。 ※ただし、TC素材でも火の粉による穴あきや焦げを完全に防げるわけではありません。
言い換えれば、総合的な居住性ならヴィガスII、ソロキャンプそのものの楽しさを重視するならトイロTC。どちらが優れているというより、「何を快適と感じるか」で選択が変わる2幕だと思います。
重量面では意外にもトイロTC(10.5kg)がヴィガスII(9.36kg)を上回っており、TC素材を採用したことも重量増の一因と考えられます。車キャンプ前提であれば重量はそこまでシビアな制約にはなりません。
トイロTCはまだ発売前のモデルのため、実際の使用感については発売後の実機レビューを待ちたいところです。
ではまた!
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